東京高等裁判所 昭和59年(ネ)504号 判決
請求原因第四項(払込催告と期限の利益の喪失)の事実中催告が相馬はつみに対し不送達になったこと及び信用金庫取引約定書第一一条第二項の規定の存在は、いずれも当事者間に争いがなく、その余は、≪証拠≫により認めることができる。
控訴人(編注・連帯保証人)は、通知、催告等の到達を擬制する右約定書第一一条第二項の規定は、債務者が有する期限の利益を一方的に奪う失期約款については効力が及ばないし、仮にそうでないとしても、かかる規定は金融機関の取引先の利益を極端に損なうものであるから、制限的に解釈すべきであり、本件のような定期積金の払込の遅滞により貸金債務の期限の利益まで喪失させるのは不当である旨主張する。前顕≪証拠≫によれば、同約定書第一一条第一項は、債務者において住所その他届け出事項に変更があったときは、直ちに書面によってこれを届けるべきことを義務づけ、これをうけて同条第二項は、債務者が右届け出を怠ったため、被控訴人からなされた通知又は送付された書類等が延着し、又は到達しなかった場合には、通常到達すべき時に到達したものとみなす旨定めているのであるが、かかる特約は、被控訴人と取引契約を結ぶ債務者等に対し原則として有効であると解せられ、請求原因第一項4ロのいわゆる失期約款について、そこで必要とされる被控訴人の定期積金払込の請求には右特約の効力が及ばないとか、又はこれを制限的に解釈すべきであるとかする合理的理由は見出せない。よって控訴人の右主張は採用することができない。したがって、相馬は、前記定期積金払込の催告が通常到達したと解すべき昭和五五年二月一七日に本件貸金について期限の利益を喪失し、直ちに弁済すべき義務を生じたことになる。
(小堀 吉野 山崎)